大坊珈琲の時間

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先日、友人が装丁した本を頂いた。わざわざ私の為に、取り置きしてくれていた本。それだけでも、十分嬉しいことなのだが、本の内容もとても素晴らしく、何かに迷った時、力をかしてくれる本になるだろうと確信している。

本の内容は、2013年12月まで表参道にあった自家焙煎、ネルドリップというスタイルを貫き続けた「大坊珈琲店」店主 大坊勝次さんと、愛知県瀬戸市生まれの陶芸家、金憲鎬(きむほの)さんとの対談形式となっている。珈琲を作り続けること、陶芸作品を作り続けることで、辿り着いた真理。作中でも仰られている「何をしても「真実をあらわす」ことはできる。」と言うことを気付かせてくれた。

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残念ながら、閉店までに大坊珈琲店には行くことができなかったが、この本を通じて、大坊さんの珈琲への思い、人生観、仕事観に触れることが出来たのは、とても幸運なことだと感じている。

金憲鎬さんに関しては、一度だけ日本橋高島屋で行われた個展に御伺いしたことがある。陶芸に関して、決して造詣が深いわけでもないので、分かった様なことを言うつもりは毛頭ないが、一度見たら決して忘れないインパクトがあった。しかし、ただ奇抜なものという意味ではなく、不思議と周りの物質と調和する作品。人の手で作られた人工的なものだけど、自然発生的に生まれた様な不思議な空気をまとっている。

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言葉にしてしまうと軽薄になってしまいそうだが、私が理想とする「大人」とは、彼らの様な人達なのだと思っている。

日々終わりのない螺旋階段を上るがごとく、自分を信じて進んでいくことの大切さ。それを可能にするには、「覚悟」がなければ、螺旋階段という感覚はなく、同じところをグルグル回っていると思い込んでしまい、耐え切れなくなる。

自分を貫く為の我慢は、どんな人生でも必ず必要になってくる。本当に好きなことだけやってればいいという非現実的な主張は、あまりにも子供染みていて、一生共感できないだろう。

ーー金:自分を通すための我慢は必要だと思うし、それを乗り越えないと自分を通せないと僕は思うんですよね。やりたいことをやるのが自由じゃなくて、自由は獲得するものですよね。その中にいろんなことがあるわけだし、それを乗り越えて、初めて自由を得る。だから、誰もやりたいことだけやって我慢は何もしていないって思っていないし、そういう風に思っている人がいたら、阿呆ですよね。ーー

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経済感覚を意識しつつ、自分が何者になりたいかを追求していくことは簡単なことではない。だからこそ、日々自分と向き合い、苦しくとも考え続ける必要がある。仕事とは何なのか、自由とは何なのか、大人とは何なのか、、。

この本に触れて、改めて思ったことは、人生とはそんなにシンプルなものではないということ。あらゆる事象が絡み合い、日々変化していく自分を取り巻く環境。なんだか難しいことをシンプルに表現することが良しとされている風潮があるが、すごく違和感を感じてしまう。そんな簡単なものではない。難しいから人生であり、難しいからこそ楽しいのだと。

あらゆる葛藤と正面から向き合い、一つずつ階段を上ってこられたであろうお二人の言葉は、先人の知恵であり、真理だと思う。

一冊の本との出会いで、人生が好転することは往々にしてあることだ。

ぜひ、一人でも多くの方にこの本を手に取って読んで頂きたい。

この本をプレゼントしてくれた友人に心から感謝している。ありがとう。

・取扱店について
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